ハラスメント論(3):「大人のルール」が“悪い”による正当化

「大人のルール」が「子どもの遊びを奪っている」というルール否定を語るストーリは、大人か子どもかの対立関係を強調することが特徴です。たとえば、ある都内住宅街のプレーパークの例でみると、遊び支援のNPO理事が「大人の文句ばかりで遊ぶ場がない」というコトバで、住民がクレームする事に対して非難していました。さらに加えて、被害側に「なぜ引っ越ししないのか」と非難したり、「子どもの遊ぶ自由のために早く引っ越すべきだ」という「子どものため」という大義が一面的に強要されたりしていました。

こうした一面化された”正義”のストーリにより、語る当人達は意識していないとしても、被害を受ける住民に対して子どもへの”罪悪感”を与えようとします。その”罪悪感”を被害住民に認めさせる必要があるからこそ、「あなた達は子どもの遊びを奪ってる」と非難するというわけです。

このストーリからすると公園の条例も「大人が勝手に決めたルール」として否定することになります。それは「自由に遊ぶ」ことを妨げるものとされ、そのために公園内の看板にある「サッカーや野球は迷惑にならないようにしましょう」のような注意書きは、園内の子どもに無視されてしまうことになってしまいます。自由な遊びを邪魔する”大人が悪い”という単純化した考え方が浸透し、そこで遊ぶ子ども達も植え付けられてしまうのです。

こうしたひとりよがりな”正義”のストーリこそ、モラルハラスメントを生み出す要因になってきます。それが向かう方向は子どものためではなく、むしろ大正時代に流行った大人否定の「児童中心主義」のような偏った教育論にはまってしまいます。

 

匠英一 について

日本ビジネス心理学会:副会長 / デジタルハリウッド大学(元)教授      専門は心理学(認知科学)を軸にした教育・人材育成や組織改革であり、心理・経営コンサル業に30年以上従事。1980年の学生時代から学びの楽しさをコンセプトにした塾経営もおこない、東進スクール研究所の顧問やデジタル教材の監修・企画(ニッケンアカデミー)し、90年代より日本初の認知科学専門のコンサル会社(株)認知科学研究所を創設。 アップル社や(財)中央職業能力開発協会等のコンサルに従事。現在までにCRM協議会(初代事務局長)、日本ビジネス心理学会など業界団体15件を企画・創設。 *詳細は→https://www.bookscan.co.jp/interviewarticle/401/1
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